子育てのヒント

小児科医・保健師・助産師など、専門的立場の方々からの応援メッセージです。子どもにおすすめの本や食事のレシピもあります。

  • ものがたり文化の会 村上節子さん

    2005年10月3日

    絵本プロフィール

    1947年 静岡県袋井市生まれ
    1971年から10年間物語の表現による子どもの英語自然習得活動を指導。
    子どもたちのお話の世界を広げるのに熱心な時代だったので、家庭文庫(当時はオーロラ文庫と呼んでいた)を開き、セミナー委員として、ストーリー・テリングなどの講座にも進んで参加していた。
    初めて覚えたのは「3枚のおふだ」と「猫の王」。また「子どもの本の世界―300年の歩み-」(ヒューリマン)「児童文学論」(L・H・スミス)「本・子ども・大人」(ポール・アザール)「五歳までの本」(ドロシー・オーワイト)「子どもと本の世界に生きて一児童図書館員のあゆんだ道」(E・コルウェル)や松居直さんの絵本論などを仲間に学んだ。
    浜松子ども劇場図書文化部に属していたときは、例会時にお勧め絵本の紹介のリーフレットを作り、即売会もやった。

    1982年ものがたり文化の会発足と同時にチューターとして活動を始め、現在に至る。
    「心を強くやさしくする一番だいじな栄養」である物語の中で、主に宮沢賢治童話の世界を「感じ、考え、調べ、工夫し、共同する」を合言葉に異年齢集団で耕し、表現しています。

    「ぴよぴよ文庫」(0歳からの対応が大切と感じ、「オーロラ文庫」を改名)主宰
    「おはなしひろば・ぴよぴよサークル」主宰
    「浜松子ども文庫のつどい」会員
    「宮沢賢治童話に親しむ会」代表
    「俳句十代」中部地区世話人

    おかげさまで35年もの間、「子ども大好き!お話大好き!おばさん」として続けられたこと、そして、今でも子どもたちに囲まれて、お話の世界に遊ぶ仲間に入れてもらえていることに感謝し、一人ひとりの子どもたちの内面と真向っていこうと思う毎日です。

    執筆者紹介
  • いたずらきかんしゃちゅうちゅう

    2005年10月3日

    「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」
    文・え バージニア・リー・バートン
    訳むらおかはなこ

    いたずらきかんしゃちゅうちゅう

    この一冊を選ぶということはとても難しい。とても優れたいい本といわれるものでも、この子の今にぴったりのものはと思うと・・・ また、今だけ楽しめればというものでもない。男の子、女の子だから、3歳だから、でもないし、個性、環境・・・挙げていくと切がない。それでも、一生のうちに一度は通ってほしい世界はあると思う。それもできれば子ども時代に。

    ほとんどを新しい本(新刊本という意味ではない)が占めている文庫の本棚の隅に色あせて、シミがつきボロボロになったのを修理した絵本たちが並んでいます。学生時代から集めていたこれらの本(エッツとバートンのものが圧倒的に多い)は、一見地味な印象を与えるものが大部分(エッツ、バートン以外では、「はなをくんくん」「おやすみなさいのほん」「はなのすきなうし」「サリーのこけももつみ」など)だったのですが、それらの本が子どもたちの気持ちをひきつけ、くり返し楽しませ、心に深く残っていく本になることを実感しました。それは、子どもの感じ、想像する力を見直すきっかけになりました。

    いたずらきかんしゃちゅうちゅう

    のりもの好きの息子の心をとらえたのは、やはりのりもの絵本で、ふだんの会話にも「やえもん」「じぷた」「メアリ」「メーベル」などが出てきました。中でもバートンさんが機関車好きの長男アリスのために書いた「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」に案の定はまりました。「やえもん」に心を寄せ、「じぷた」に声援を送り、「のろまなローラー」に自分を重ねていたと思われる息子は「ちゅうちゅう」といっしょに「ハチャメチャな冒険」(バートンさんいわく)に出かけていたのでしょう。若い「ちゅうちゅう」をとりまく機関士ジム、機関士助士オーリー、車掌のアーチボールド、そして元機関士の老人などの登場人物も魅力的です。木炭で画面いっぱいダイナミックに描かれた絵と声や音が聞こえてきそうだったり、気持ちまで表現している文字の大きさや文の配置はぴったり調和しています。
    見返し(ここだけカラー)にも心使いが見られ、子どもたちへの愛情が伝わってくる「行きて帰りし物語」の一つです。

    最近の子どもたちのことばの軽さ、弱さ、浅さを思うとき、人と付き合うことを大切にするライフスタイルを持ち、「よい本を作ること、そうでなければ全然やらない方がまし」と言い切り、寡作を通したバートンさんの絵本を選んでみました。

    文/村上節子さん

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  • まいごになったぞう

    2005年9月28日

    まだ字が読めない子が好きになる本

    「まいごになったぞう」
    てらむらてるお文・むらかみつとむ絵 偕成社

    まいごになったぞう

    絵本とか童話を買うのは、子どもではなく、大人だ。
    一応子どもに選ばせたとしても、大人が見て、「これならいいわ」なんて思った本。
    もちろん、本を買うお金は子どもが働いて得たお金ではないし、入園前の子どもに、優良図書の選定眼は期待できないし、絵本って結構高いから、どれもこれも買うことなんてできないし…、それは大人の理由としては仕方がないことかもしれない。

    でも、大人が選ぶ本が、子どもが好きな本かというと、それは違うことが多い。
    子どもは、意味がない言葉の繰り返しや、ある単語に「はまる」。
    それが、大人には、ちょっとつかみにくいのだ。
    この、「まいごになったぞう」は、見ていても楽しいが、何を言われても、「あばば、うぶー」と答える赤ちゃんぞうのセリフがリズミカルで、聞いている子どもたちの、うれしくてキャーキャー笑う声が聞こえてきそう。
    内容は、タイトル通り、まいごになったぞうが、いろんな動物に助けられて、
    お母さんのところにたどり着く、というもの。
    文は「王さまシリーズ」や「おしゃべりなたまごやき」で有名な、寺村輝夫さん。
    簡潔で、実際的。リズミカルな文章である。
    絵は、私の本の挿絵も書いてくださっている、村上勉さん。
    赤ちゃんぞうが、ごろんごろん転がっている姿は、とても愛らしい。

    この本は、「信じる心」とか「やさしさ」がある。
    でも、このお話に出てくる動物たちは、誰かが責任を持ってお母さんのもとに送り届けてくれるわけではなく、とりようによっては、キケンな森の中に、運が良ければ助かるよ、と放り投げる。そこに引っかかる人もいると思う。
    子どものために購入する本は、ぜひ一度、図書館などで読んでみてほしい。
    そして、気に入ったら、ぜひ購入してください。
    きっと、小さな子どもが、べたべたの手で持ち歩きたい本になると思うから。

    文/池川恵子さん

    おすすめ図書
  • コッコさんのともだち

    2005年8月9日

    絵本に教えてもらった「成長する子ども」

    「コッコさんのともだち」
    片山健 作
    福音館書店

    コッコさんのともだち

    こどもって、「いつのまに成長したの!」って思うときがありませんか。「育てた」というより、まさに親の知らない間に「成長したんだ!」って、思わずうるうるしてしまうときが。我が子に重ねあわせて、それをいとおしいくらい感じさせてくれるのが「コッコさんシリーズ」です。

    よく、「こどもを“育てる”なんていうのはおこがましい。こどもは“自分で育つ”んだ」という人がいますが、私はとてもそんな気分にはなれませんでした。少なくとも6歳くらいまでは、一生懸命“育て”ました。それでもたまに“こどもって自分で育つんだ”と実感させられることがありました。この「コッコさん」シリーズは、「こどもって、親の知らないところでこどもなりに悩んで努力して健気に成長しているのね」と思わずじーんとさせられますげじげじまゆげとおちょぼ口が何とも愛らしいコッコさんに、私がはじめて出会ったのは、「コッコさんのおみせ」でした。

    コッコさんはおみせやさんを開業しますが、お客さんはだれもきません。おとうさんもおかあさんもおにいちゃんも、無理をしてコッコさんに合わせることはしません。そこでコッコさんは“営業努力”をします。そう、出前までするんですよ。お客さまの声も反映させます。こどもっておとな社会をちゃんとみているんだなと、ちょっとどっきりさせられます。コッコさんのおとうさんがまた素敵です。こどもとの絶妙な距離の取り方に、私はいっぺんでファンになりました。そして「コッコさんシリーズ」にはまりました「おやすみなさいコッコさん」も「だーれもいないだーれもいない」も好きな作品ですが、私はやっぱり「コッコさんのともだち」が一番好きです。

    おとなって、「おともだちとなかよくするのよ!」とか「ともだちできた?」とか、気軽に言います。でも、内気でナイーブなこどもにとって、ともだち作りは本当に大変なことなんですね。
    コッコさんは保育園でなかなかともだちができません。いつもひとりぼっち。でも、ある日、偶然同じ色の服を着ていたことから、アミちゃんとなかよしになりました。つまらない絵本はここまでに頁数をさいて、めでたしめでたしで終ります。この作品の素晴らしいところはここからです。
    毎日一緒に遊べば、当然うまくいかない時がきます。コッコさんにもきました。コッコさんははじめてアミちゃんとけんかします。そしてしかたなくほかの子と遊びます。それをきっかけにアミちゃんとも仲直りして、それからというのも、コッコさんとアミちゃんは、みんなといっしょに遊べるようになるのです。

    コッコさんのともだち

    作者はコッコさんの心の変化を、服の色で表します。コッコさんとアミちゃんがなかよくなったときは同じ色の服。気持ちがすれちがった時はちがう色の服。そして、アミちゃんとなかよしになり、みんなとなかよしになったときには、もう、ちがう色の服を着ていても大丈夫。つまり自分は自分でいながら、アミちゃんともみんなとも一緒にやっていけるようになったのです。

    親が囲い込むようにしてこどもを守って育ててやっても、どうしても親の力が届かないところがあります。でも大丈夫、こどもは幼いなりに自分の力で解決していくんだ、その力をこどもは持っているんだと、親子にエールを送ってくれる絵本です。

    文責:浜松市立中央図書館 辰巳なお子

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  • ねずみのアナトール(文研出版)

    2005年7月9日

    タイタス さく / たがやたえこ やく / はまだみちこ え


    ねずみのアナトール 前回、私が書いた「まほうのあめだま」は、佼成出版から出版されている。
     なぜこんな書き出しかというと、今日ご紹介する「ねずみのアナトール」が、私としては、文研出版のものでなくてはならないから。他の出版社のものは、絵が原作のままらしいのだが、この「ねずみのアナトール」の『はまだみちこ』さんの絵が、まさに、トレビアン!(すばらしい!)
     子どもだった私は、出てくるチーズの絵を見て、思わずチーズ好きになってしまい、フランスの町並みの絵を見て、一度は行ってみたいものだとあこがれた。
     外国の本というのは、翻訳次第でつまらなくなってしまうことがあるが、この本は、翻訳も申し分ない。アナトールの気持ちの変化が、子どもにもわかりやすく、ていねいに書かれている。
     大人になって、もう一度読み返しても、その感動は薄れることがなかった。珠玉の一冊である。

     ネズミの「アナトール」は、お父さんねずみだ。
     いつものように、人間の台所で、家族のために残り物をあさっていると、人間に見つかってしまい、フランスの恥、とまで言われたアナトール。悲しくなったアナトールは、ねずみと自分の名誉のために、食べ物をもらう代わりに何かお返しができないかと考えた。
     ねずみの好物ってなんでしょう? ねずみの好物は、そう、チーズ。(お話の中のネズミ捕りのエサでおなじみの…ね)で、この本でも、やっぱりチーズ。なんと、アナトールは、チーズ工場の味見係りになったのだ。

     この本の主人公はアナトールだが、作者は、家族のことを片時も忘れていない。つらい思いで家に帰ってきたアナトールを慰めるのは奥さんネズミだし、アナトールのことを尊敬する子ネズミたちが、いつも家で待っている。本を読み終わったとき、家族っていいなあ、ってほんわか思ってしまう。

     お父さんが中心になっている児童書、なかでも絵本というのは、がっかりするほど少ないのが現状だ。父の日は終わってしまったけれど、お父さんってカッコイイ、って思ってもらえるこの絵本、おすすめです。


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  • まほうのあめだま 安房直子/いもとようこ

    2005年6月12日

    今月は、児童文学者の池川恵子さんからのお薦めの本です。池川さんは浜松市出身の童話作家として活躍されています。素敵な本をいろいろ紹介してくださるとのこと、楽しみですね!
    →池川恵子さんからのメッセージ

    * * * * * *

    「まほうのあめだま」
    安房直子/いもとようこ

    まほうのあめだま

    「まほう」「あめだま」この二つのキーワードが入ったタイトルを聞いただけで、子どもたちは興味津々。今は亡き、安房直子さんの作品。
    引っ越すことになって、今まで飼っていたネコ、チローを、おかしやさんのおばあさんにもらってもらうところから話は始まる。この本がおもしろいのは、さみしがっていることを、元の飼い主の女の子、みほこちゃん側からではなく、チローの側から書いていること。まほうのあめだまをなめて、わたあめみたいなチローが、ふわふわ空を飛んで、みほこちゃんに会いに行くのだ。

    わたしはときどき、自分の子どもの小学校で、お話会のボランティアをしているが、今四年生の子どもたちが二年生だったころ、この本を一学期に読んだ。その年の三学期、今後の参考に、お話会でおもしろかった本のアンケートをとることになり、大多数の子どもたちは、そのアンケートをとったころ読んだ本の名前を挙げた。でも、二年生の一クラスに限っては、一学期に読んだ「まほうのあめだま」だった。他にいっぱい覚えることがあったり、楽しいことがあったりする年代に、これは快挙ではないか。

    安房直子さんの作品は、わたしと同年代の人たちに親しい。教科書に載った「きつねの窓」の作者である。ききょう色に染められた指で作った思い出の窓は、帰宅し、手を洗うと消えてしまった。
    食べると消える、使うと消える。当たり前だけど、何度もリセットできるゲームとはまったく違う世界を感じさせてくれる。それが、安房直子さんの作品だ。
    まほうのあめだまだって、食べたらおしまい。メルモちゃん(手塚治虫)のキャンディのように、いくら食べてもいつもビンはいっぱい、なんてことはない。それはきっと、登場人物が成長していけば、必要なくなるものだからなのだと思う。
    いもとようこさんの、真ん中に星が入った虹色のあめだまが、お話をふくらませているこの作品。読むのはちょっと苦手、というお母さん、お父さんに、絵がいっぱいで読みやすい、「まほうのあめだま」、おすすめです。

    おすすめ図書
  • 童話作家 池川恵子さん

    2005年6月12日

    海辺のボタン工場プロフィール

    はじめまして。池川恵子と申します。これから不定期で、おすすめの児童書・絵本をご紹介させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
    ところで…。先日東京で、私が所属している日本児童文学者協会で、会員の集いがありました。普段浜松にいて、ただ黙々とパソコンに向かったり、本を読むぐらいしか創作とふれあうことがない自分にとって、こういう会は、情報を仕入れるチャンスです。ベテランの方々もいらっしゃるし、ジャンルが違うたくさんの人と知り合うのは刺激になります。
    その日、創作について語ってくださった作家さん。私が常に気をつけていることと同じことを言っていました。それは、「間違ったことを書いてはいけない」ということ。タヌキやイタチがしゃべりだす、それはうその世界ではなく、創作の世界です。「間違ったこと」というのは、具体的に言えば、意味もなく、ただただ作者の思い込みで間違えて、太陽が西から昇ったり、夏の海でカモメが群れていたり、雪野原にツバメが飛んでいたり、ということでしょうか。もちろん、不自然なことが、作者の意図するところであればまったく問題はないのですが、残念ながら、時々「???」と思う本にぶつかることがあります。子どもは、なんでも吸収してしまいますから、間違っていても、そのまま覚えてしまいます。本はただ与えるだけではなく、ぜひ先に一度読んでみてください。そして、変だな、と思ったら、本当はどうなんだろう?と考えてみてください。なんでもないことかもしれないけど、なにか引っかかるんだよね、という気持ち、大切にしてください。

    1965年 静岡県浜松市生まれ
    1999年 熊野の里童話大賞・遠鉄ストア童話大賞を受賞し、現在に至る。
    ホームページ『虹の谷通信』 作品紹介海辺のボタン工場
    2000年11月 ひくまの出版虹の谷のスーパーマーケット
    2001年3月 ひくまの出版花さき村のなんでもタクシー
    2001年12月 ひくまの出版

    虹の谷のスーパーマーケット花さき村のなんでもタクシー

    執筆者紹介
  • おやすみなさいフランシス

    2005年3月14日

    絵本は育児書

    「おやすみなさいフランシス」ラッセル・ホーバン文
    ガース・ウイリアムズ絵
    松岡享子訳
    福音館書店

    おやすみなさいフランシス

    こどもって、早く眠ってほしいときに限って、なかなか寝てくれませんね。親が眠らせようとやっきになると、こどもはますます目がさえて、仕方なく「えいっ、とことんつきあうぞ!」と親が気持ちを切り替えたとたん、こどもはすやすや…我が家もこんなことの繰り返しでした。
    古今東西、親たちはこどもを眠らせることによほど苦労したらしく、絵本にも物語にも、こどもを寝かせる場面がよく登場します。
    親としてもっとも素敵な対応は「おやすみなさいフランシス」に登場するおとうさんでしょう。何かと理由をつけては起きだして、居間にいる親たちのところへやってくるフランシスを、おとうさんは本当に見事に丁寧に受けとめてやります。でも、しまいにはきっぱりとした態度で言い聞かせます。
    子育て真っ最中のとき、私にとって絵本はどんな育児書にも勝る育児のバイブルでした。この、「フランシス」(福音館書店・好学社)をはじめ、「くんちゃん」(岩波書店・ペンギン社)、「くまたくん」(あかね書房)、そして「コッコさん」(福音館書店)のシリーズに、どれだけ助けられたかわかりません。こどもたちもこれらの絵本が大好きで、毎晩繰り返し読みました。それは親としてまさに至福の時でした。同時に、これらの絵本から、こどもがどんなときに悲しみや不安を抱くのか、どんなときに幸福感を得るのか、学ばせてもらいました。これらの主人公は、シリーズの中で少しずつ成長します。それに我が子の成長を重ねあわせるのも楽しく、また、夫も同じ絵本を読むことで、子育ての共通理解も持てました。
    今はもう、我が家のこどもたちは親元を離れて一人暮しをしていますが、絵本を開くと、こどもたちと一緒に絵本を楽しんだころが鮮やかによみがえります。

    文責:浜松市立中央図書館 辰巳なお子 氏

    おすすめ図書
  • 辰巳なお子さん(浜松市立中央図書館 館長)

    2005年3月14日
    709ebba6.jpeg私は約30年間、公私共に子どもの本に携わってきました。昭和48年、希望がかなって図書館で働くことになりましたが、当時はまだ児童サービスは図書館の業務のなかで重視されていませんでしたし、私も特別関心があったわけではありません。

    私が子どもの本に興味を持ったのは偶然でした。1年目も終わるころ、児童室担当の職員が産休に入ったため、半日だけ代理で児童室を任せられたことがきっかけでした。小さい時から本が大好きで、小学校、中学と学校の図書室にある本は片っ端から読んだつもりでした。当時は、本なんてなかなか買ってもらえませんから、本があれば、親戚でも、ご近所のうちでも上がり込んで読ませてもらいました。今思えば、あつかましい子どもだとさぞ迷惑がられていたことでしょう。

    ところが、市立図書館の児童室に来てみたら、私の知らない本が沢山あったのです。毎日借りて帰っては読むということがしばらく続きました。ポターやエッツ、バートンらの絵本、ルイス、トールキン、ペイトン、サトクリフらの壮大な物語など、面白くて面白くて夢中で読み続けるうちに、無性に腹がたってきたのです。「大人になった今読んでもこんなに面白いのだから、子ども時代にこれらを読んだらどんなに面白かっただろう。でも、世の中にこんなに面白い本がたくさんあることを子どものときにだれも教えてくれなかった」本当に悔しくてなりませんでした。その時、はっと気がついたのです。もしかしたら、今も、知らずに子ども時代を通り過ぎてしまっている子どもがたくさんいるかもしれないと。今の子どもたちは、毎日沢山の情報やものに囲まれているけれど、子どもたちに本当に必要なものは、ちゃんと届いているのだろうか?私のような悔しい思いをさせたくないと心底思い、これが私の子どもの本に携わる原点になりました。

    子どもの本の世界に足を踏み込んだことで、思いがけずいろいろな出会いがありました。東京、大阪をはじめ全国の魅力的な図書館員と知り合うことができ、意見や情報を交換できました。、図書館員だけでなく、作家や出版関係者、研究者などいろいろな分野の素敵な方々と知り合うこともできました。なかでも「家庭文庫」といって、自宅の玄関先などに子どもの本を置いて近所の子どもたちに貸し出している方と知り合ったことで、この世界の面白さと奥深さを知り、ますます抜け出せなくなりました。

    今は、子どもたちと直に接することができるのは、たまにやらせてもらうおはなし会や、ボランティアで昔話を語りに行くときくらいですが、気持ちはずっと同じです。「子どもたちに、はらはら、どきどき、わくわくする本をいっぱい届けてあげたい!」

    2005年3月21日


    ※2006年4月より浜松市立中央図書館の館長に就任されました。(ぴっぴ)
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